サッカーにおいて、1対1での球際の攻防を意味する「デュエル」。
この言葉を聞いて、真っ先に思い浮かぶ選手といえば、遠藤航選手ではないでしょうか。
遠藤航選手は、サッカー界の中では数少ない、「マウスピース」をつけてプレーする選手の一人です。
ブンデスリーガで、2年連続のデュエル王に輝くほどの高いパフォーマンスと、マウスピースの装着には、どのような関係があるのか気になりますよね。
この記事では、遠藤航選手がマウスピースをする理由や、その効果を紹介していきます。
さらに、マウスピースの制作秘話や、高級車が買えるほどと噂されている価格についても深掘りしていきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
Contents
遠藤航がマウスピースをする理由
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遠藤航選手がマウスピースをするのには、「歯を守る」ことと、「メンタを切り替える」という、2つの理由があるようです。
マウスピースをつけ始めたきっかけは、シュトゥットガルト在籍中に出会った、歯科医師の宮川順充(ミヤカワ ユキミツ)さんから、「いいマウスピースがパフォーマンスに違いを生み出す」と、教えられたことにあります。
そして、試合中にマウスピースをつけるようになった遠藤航選手のパフォーマンスは、ブンデスリーガで2年連続のデュエル王になるまでに向上していきました。
歯を守る
遠藤航選手は、マウスピースをする理由を、担当医師である宮川順充さんとの対談インタビューで、次のように語っています。
もちろん手が当たったりする可能性もあるわけですが、まず何が大事かって、歯を守るためなんで。なかったら「歯が折れるんじゃないか」と思いながらプレーをして「デュエル」に行けなくなって、自分の良さをまったく出せなくなる可能性があります。
引用:シンクロナス
マウスピース装着によって得られる、歯が守られているという安心感が、デュエルでのパフォーマンス向上につながっているようです。
メンタルを切り替える
マウスピース装着の理由について、リヴァプール公式ページでは、「これをつけると、ファイターのように見えるので、ピッチに入る時にマウスピースをつけているだけで、ゲームモードのようになる」という、遠藤航選手のコメントが紹介されています。
ファイターとなって試合に挑むための「メンタル切り替え」としての役割は、身長178cmの遠藤航選手が、屈強な体の外国選手と戦ううえで、必要不可欠なものになっているといえるでしょう。
医師がすすめるマウスピースの効果とは
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ここでは、遠藤航選手の担当医師である宮川順充さんがすすめる、マウスピースの効果を2つ紹介していきます。
その一つは「リラックス効果」、もう一つは「脳を守る効果」です。
リラックス効果
「サッカーをはじめとした、一般的なスポーツは有酸素運動であり、そもそも歯を食いしばる機会すらありません。」こう話す宮川医師は、マウスピースを、噛みしめるためではなく、リラックスするためのものだと考えます。
人の顎は、普通に噛むときと、運動などのパフォーマンス中に噛むときとでは、まったく位置が違うとのこと。
そこで、マウスピースをパフォーマンスポジションに合わせて作ることによって、顎の位置を、効率よくベストなポジションに持っていくことができるといいます。
噛めば、自然にベストなポジションに顎が誘導される動きが、脳にリラックス効果をもたらすようです。
脳を守る
マウスピースには、歯を守るほかにも、脳を守る効果があるといいます。
「マウスピースの一番の役割はもちろん歯の保護ですが、脳を守ることにも役立ちます。個人差はありますが、重量挙げの選手のパフォーマンスがマウスピースの着用によって向上するのと同じことがサッカー選手にも言えます」
サッカーでの競り合いの場面で、相手選手の肘が口にあたっても、マウスピースが衝撃を分散してくれるので、脳への影響を軽減できる効果があるようです。
宮川医師は、歯と脳を完全に守るため、それまで前例のなかった「カーボンファイバー製」のマウスピースを完成させています。
遠藤航のマウスピース制作秘話
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宮川順充医師(左)と遠藤航選手(右)
遠藤航選手のマウスピースは、シュトゥットガルト在住の歯科医師、宮川順充(ミヤカワ ユキミツ)さんによって制作されています。
完全オーダーメイドでのマウスピース作りは、遠藤航選手が、シュトゥットガルト在籍中の2019年に、宮川医師のもとを訪れたことをきっかけに始まりました。
制作当初、歯科用のプラスティック素材で作っていたマウスピースは、“薄さと強度”を追求していく宮川医師の手によって、それまで前例がなかった「カーボンファイバー素材」でのマウスピースに進化していきます。
1つのマウスピースが完成するまでに要する時間は、10から15時間ほど。
宮川医師が通常勤務の合間を縫って制作し、遠藤航選手による2回のテスト試用を経て完成します。
宮川医師は、アスリートのパフォーマンスに影響をもたらす「下顎位(顎関節の位置)」にこだわり、ミリ単位で調整してきたようです。
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遠藤航選手のパフォーマンスがさらに向上していけば、サッカー界だけでなく、スポーツ界全体にも、マウスピースを装着する選手が増えていきそうですね。
遠藤航のマウスピースはいくらする?
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遠藤航選手が使うマウスピースの価格は、一部メディアで「高級車が買えるほど」と言われています。
まず結論からいうと、マウスピースの価格は公開されていません。
なぜなら、マウスピースは、担当医師の宮川順充さんが、遠藤航選手のために無償で提供しているからです。つまり、販売価格は誰もわからないということです。
では、なぜ「高級車が買えるほど」という報道が出たのでしょうか。
それは、ドイツ紙「ビルト」に掲載された、宮川医師のインタビュー記事にあります。
記者からの、制作費に関する質問の答えに困った宮川医師が、「一つずつの値段を出すのは難しいですが、これまでの合計は、高級車が軽く買えるぐらいの金額になっていると思います」と話したことが発端となり、「高級車」のキーワードだけが一人歩きしてしまったようです。
宮川医師が伝えたかったのは、「これまで制作したマウスピースは、試作品を含めると60〜70個になり、それらにかけた費用を合計すると“高級車が買えるほど”になる」ということのようです。
ちなみに、世間一般的に、高級車の基準が500万円前後と言われていることから単純計算すると、遠藤航選手が使用するマウスピース1個当たりの価格は、約8万円といったところでしょうか。
スポーツ用マウスピースをオーダーメイドで作った場合の相場は、1万円〜5万円ということを考えても、高価な品物であることには間違いなさそうですね。
遠藤航の他にもマウスピースを使う選手はいる?
近年、スポーツ医学の分野では、歯を保護する目的以外にも、身体能力を向上させる効果があるという研究結果も数多く報告されているマウスピース。
ここでは、遠藤航選手の他にもマウスピースを使っている選手を4人紹介していきます。
三苫薫選手(ブライトン所属)
画像引用元:ゲキサカ
まず1人目は、今や日本代表のエースとなった、イングランド・ブライトン所属の三苫薫選手です。
筑波大学卒業時には「ドリブル研究論文」を作成するほど、サッカーを論理的にとらえている三苫薫選手は、トレーニング中もマウスピースを使い、効率的なメニューをこなしています。
リラックス状態から一気に加速する、緩急を使ったドリブルを武器に世界で活躍する三苫薫選手にとって、マウスピースの効果は大きいのではないでしょうか。
旗手怜央選手(セルティック所属)
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2人目は、スコットランド・セルティックに所属する、日本代表の旗手怜央選手です。
旗手怜央選手はボランチを主戦場としながらも、攻撃的ミッドフィルダーや、ウイング、サイドバックをこなす、ユーティリティプレーヤーとして活躍しています。
最大の武器は、身長172cmと小柄ながら、外国人選手を吹き飛ばすくらいのフィジカルの強さです。デュエルを武器とする遠藤航選手と同じように、マウスピースをつけることで、最大のパフォーマンスを発揮できているのではないでしょうか。
豊田陽平選手(ツエーゲン金沢所属)
画像引用元:J.LEAG.jp
3人目は、J3ツエーゲン金沢に所属する、元日本代表の豊田陽平選手です。
豊田陽平選手は、サガン鳥栖に入団した2010年から、10年以上マウスピースをつけています。もしかすると、遠藤航選手よりもマウスピースのイメージが強いという方も多いのではないでしょうか。
潜在的なパフォーマンスを、数パーセントでも上げるためのきっかけとしてマウスピースを使用してきた豊田陽平選手。マウスピースの装着により、相手との競り合いや空中戦といった、自身が得意とするプレーの質を、より高めることができたのではないでしょうか。
チェイス・アンリ選手(シュツットガルト所属)
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4人目は、ドイツ・シュトゥットガルトに所属する、チェイス・アンリ選手です。
現在20歳のチェイス・アンリ選手は、17歳のときに“飛び級”でU-22日本代表に選出された、センターバックの逸材です。さらに、A代表のトレーニング合宿に参加した経験もあることから、次世代の日本代表候補として注目を集めています。
マウスピースを提供しているのは、遠藤航選手の担当医師でもある宮川順充さんです。
高い身体能力を武器に、ドイツの厳しい環境で戦いを挑み続けるチェイス・アンリ選手の、これからの成長に期待が高まります。
遠藤航のプロフィール
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2010年、湘南ベルマーレU-18在籍時に、2種登録選手としてJリーグデビュー。2012年には、19歳ながらキャプテンを務め、クラブをJ1復帰へと導く。
2015年に完全移籍した浦和レッズでは、AFCチャンピオンズリーグで優勝し、初の国際タイトルを獲得。
2018年W杯ロシア大会にメンバー招集されると、大会後には、シント=トロイデンVVへ完全移籍。
2019-2020年シーズンの開幕直後にドイツ2部のシュトゥットガルトへ移籍し、チームの1部昇格に大きく貢献。ブンデスリーガ年間ベストイレブンに選出される。
翌シーズンにはキャプテンに就任し、2年連続のリーグ最多デュエルを記録。
2023年、イングランドの名門リヴァプールへの電撃移籍が発表された。
2023年6月には、日本代表キャプテンに就任。森保ジャパンの新リーダーとして、自身3度目となるW杯出場を目指す。
まとめ
今回は、遠藤航選手がマウスピースをする理由や、マウスピースにまつわる真相を深掘りしてきました。
この記事でまとめた、マウスピースの情報は以下の通りです。
- マウスピースをする理由:歯を守るため/メンタルを切り替えるため
- マウスピースの効果:リラックス効果/脳を守る効果
- マウスピース制作秘話:「下顎位」をミリ単位で調整した完全オーダーメイド
- マウスピースの価格:これまで制作したマウスピースの合計費用は高級車1台分程度
- マウスピースを使う選手:三苫薫選手/旗手怜央選手/豊田陽平選手/チェイス・アンリ選手
宮川順充医師の手によって、ミリ単位で改良を重ねるマウスピースは、遠藤航選手のパフォーマンスを引き出すための必需品です。
デュエルの強さを武器に、名門リバプールの主力として戦っている姿は、同じ日本人として誇らしいですよね。
今後も、日本サッカー界を牽引していく遠藤航選手の活躍に注目です。